大吉
 (きょろきょろ・・・・・・)
夕未「おかしいなあ。もう来てるものだと思ってたのに・・・ったら、一体何やってるのかしら?」
「ごめ〜ん、夕未! 遅くなっちゃった!」
夕未「あっ、遥。珍しいわね、待ち合わせに遅れるなんて」
「うん、出がけに梨花さんがあれこれ言って引き止めてくるんだもん。・・・・・・待った?」
夕未「ううん、私もまだ来たばっかりだけど。でも、梨花さんが引き止めてたって、どういう事?」
「よく分かんない。なんか、今日に限って、やたらとあたしを気にかけるようなことばっか言ってきたんだけどさあ」
夕未「ふうん・・・それだけ心配してくれてるって事なのかな? まあ悪い事じゃないわけだし、ね」
「うーん、夕未がそう言うなら・・・・・・。じゃ、そろそろ行こっか。急がないと、向こうでも遅れちゃうかも!」(くるり)
夕未「・・・・・・?」
「・・・何、どうしたの、夕未?」
夕未「背中」
「せなか・・・?」(ゴソゴソ)
「あーーっ!!」
 (ぺりっ。)
「ひっどーい! 誰よ、こんなの貼り付けたの!? ・・・なにが『大吉』よ、まったく! あー、恥ずかしい・・・」
夕未「もしかして梨花さんがやったのかしら、これ」
「そう言えば、やたらとあたしの背中を触ってて・・・・・・はっ!! 玄関先でずーっとあたしの靴を触ってたけど、もしかして・・・・・・」
 (ゴソゴソ・・・)
「あああーーーーっ!!」
夕未「『交通安全』だって・・・。これ、マジックペンよね、多分・・・」
「ヒドイ!! これ、お気に入りのバッシュだったのに!!」
夕未「わぁ・・・」
「『わぁ』じゃないわよ! これ、いくらしたと思ってんのよ!」
夕未「さ、さあ・・・」
「1万8千円よ、1万8千円! しかもまだ年末に下ろしたばっかりだったのに!」
夕未「お、落ち着いて、ね。ほら、靴底だから目立たないし、歩いてるうちに擦り切れて無くなるわよ、きっと」
「落ち着けないわよ! もう許せないっ!! 帰ったら絶対に文句言ってやるんだから!」
夕未「そ、そう・・・頑張ってね・・・・・・」
 
梨花さんっ!!」
梨花「あら、遥さん。お帰りなさ・・・」
「一体どういうつもり!? あの靴、お気に入りだっ・・・・・・何、コレ?」
梨花「ああ、これですか。お守りです、厄除けの。ちょっと知人に買ってきてもらいました。はい、遥さん。」
「はい、って・・・・・・あたしに?」
梨花「ええ。実はこの本を見たんですけどね・・・」
「雑誌?」
梨花「ええ。遥さん、当面運気がよくないとこの本に書いてありましたので・・・・・・あ、ところで何かご用事でしたか?」
「あー・・・・・・・・・・・・ま、いいわ。それより、今日の晩ご飯、何? もうお腹ペコペコ!」
梨花「あら? お夕飯は夕未さん達とご一緒するはずだったのでは?」
「あ・・・・・・(文句を言うためにさっさと切り上げて来ただなんて言えないー・・・・・・)こ、細かいことどうでもいいじゃない。り、梨花さんの料理が食べたくて帰ってきたのよ!」
梨花「ふふ、じゃあそういうことにしておきますね。お店の残り物くらいしかありませんけど、いいですか?」
「うん。早く早くー!」
梨花「はいはい♪」

 

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